「源氏物語 帚木」(紫式部)

思いのままに突っ走る源氏の若さ、青臭さ

「源氏物語 帚木」(紫式部)
(阿部秋生校訂)小学館

「源氏物語」小学館

源氏は方違えで
紀伊の守の屋敷に出かける。
そこに紀伊の守の父・伊予の介の
若い後妻・空蝉が
来合わせていた。
源氏は夜、
空蝉のもとに忍び込み、
強引に関係を結ぶ。
しかしその後、彼女は
源氏の度重なる要求を
きっぱりと退ける…。

源氏物語第二帖である「帚木」。
前帖「桐壺」の終盤では、
源氏の12歳の元服と同時に、
左大臣の娘・葵の上(16歳)との婚礼が
描かれています。
本妻葵の上との夫婦生活は
一切描かれないまま、本帖「帚木」では
いきなり不義密通が
取り上げられることになるのです。
それも華麗な恋物語としてではなく、
「失敗譚」としてなのです。

源氏の恋の相手の「空蝉」。
彼女の身分は決して高くはありません。
老いた受領と結婚せざるをえなかった
気の毒な境遇の女性です。
源氏はなぜそのような女性と
関係を持ったか?
その下地となっているのが
本帖前半の「雨夜の品定め」なのです。

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「雨夜の品定め」。
何を品評しているのか?
もちろん女性です。
源氏の宮中での自室に、
親友の頭中将(葵の上の兄)、
女性経験豊富な左馬の守、
藤式部の丞の4人で
女性談義に花を咲かせていたのです。
そこに上中下の中のあたりの家柄の女に
思いがけない掘り出し物があるという
くだりが挿入されていますが、
それが伏線となっているのでしょう。

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都で噂の美男子で、
貴族の中でも極めて位が高く、
前途有望の貴公子・源氏から
言い寄られたのですから、
空蝉はもっと喜んで
いいようなものですが、
彼女はなぜ源氏を拒んだのか?
それはあまりにも違いすぎる身分を
考えてのことです。

「いとかく品定まりぬる身の
 おぼえならで、
 過ぎにし親の御けはひ
 とまれる古里ながら、
 たまさかにも
 待ちつけたてまつらば、
 をかしうもやあらまし。
 しひて思い知らぬ顔に見消つも、
 いかにほど知らぬやうに思すらむ」

(受領の妻などではなく
実家で暮らしていた頃であったなら、
たまの訪れを待っていられるものを。
知らないふりをしている私を、
身の程知らずと思っているだろう)

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先の先まで考え、
自分の気持ちを賢明に抑えている
空蝉に対して、
深い考えもなく自分の思いのままに
突っ走る源氏。
その若さ、青臭さが如実に表れています。
作者・紫式部は、
源氏の一生を描くにあたり、
本帖と次の「空蝉」では、
大人の女性にあしらわれ、
女心の研鑽を積まざるをえなくなる
若者の姿を記しておこうとしたのかも
知れません。

※源氏:17歳
 藤壺:22歳
 葵の上:21歳
 空蝉:不明

(2020.2.1)

Pop-sanさんによる写真ACからの写真

【源氏物語】
01 桐壺
02 帚木
03 空蝉
04 夕顔
05 若紫
06 末摘花
07 紅葉賀
08 花宴
09
10 賢木
11 花散里
12 須磨
13 明石
14 澪標
15 蓬生
16 関屋
17 絵合
18 松風
19 薄雲
20 朝顔
21 少女
22 玉鬘
23 初音
24 胡蝶
25
26 常夏
27 篝火
28 野分
29 行幸
30 藤袴
31 真木柱
32 梅枝
33 藤裏葉
34 若菜上
35 若菜下
36 柏木
37 横笛
38 鈴虫
39 夕霧
40 御法
41
00 雲隠
42 匂兵部卿
43 紅梅
44 竹河
45 橋姫
46 椎本
47 総角
48 早蕨
49 宿木
50 東屋
51 浮舟
52 蜻蛉
53 手習
54 夢浮橋

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